勝手な失望(1)

Suite KooDoo

#16 〔勝手な失望/1〕


移籍先に関しては、特に吟味した訳ではなかった。

ただ、とにかく知り合いが一人も居ないチームを選んだ。

合わなければ抜けて、また何処か別のチームに行けば良いと思っていた。

入ってみると、わく某には、結晶堀りやまるぐるのMAP堀りしてる人、アドのリスクをソロで上げている人等、活発に活動している人が何人か居て、すごいなあと思った。

そんなチームだから、チムメンの大体の人がアド慣れしていて、大体の人とは良いアドが出来た。良いチームに入れて良かったなあと思った。


2013年8月

ぼんやりと過ごしつつ、チームの募集に乗ったり、募集したりする生活。

そういう生活がしたくて、移籍したのだ。だから、理想的だなあと思っていた。

移籍して何週間か経った後、具合良さそうではあったので、Bさんもわく某に呼んだ。

けれどBさんはほどなく、仕事の都合でログインしなくなってしまった。


それまでは、少人数ながらも、誰かが大体側に居てくれた。

だけど、Bさんが居なくなったことで、ついに一人きりで、誰にも話しかけず、誰にも話しかけられない時間が殆どになった。

寂しかったけれど、今までもずっと寂しかったから、寂しさではない気もした。


おれは一人きり、勝手な失望で、想いを拗らせていた。



・・・

Rはもうほぼログインしなくなっていた。

もう、戻ってくるとは思ってなかった。

Rの幸せを願いながら、おれは毎日、Rにグッジョブを入れていた。

Rのフレパも毎日使っていた。

アップデートにより新しく作れるようになった「サポートパートナー」

おれは、それまで撮り溜めて居た沢山のSSを見ながら、Rそっくりのそれを作った。


光導のサポパは、出会った頃のRのパーツで。

キャスト用アクセサリが揃っているから、Rが気に入っていたアクセを着けて。

靄のサポパは、ソロTA頑張っていた頃のRのパーツで。

御雷のサポパは、一番最近の、パーツ色を変えた後のRの色とパーツで。


…作ってみてわかったことは、Rはほぼサンプル通りのキャストということだった。

だから、ものすごくあっさりと、そっくりのサポパを作ることが出来た。

少し、拍子抜けした。


サポパの性格はRというより、自分の好みで"クール"に設定した。

Rの姿をしたサポパは、おれに語りかけた。


『お前のためならこの力、如何様にでも』


それは、おれが、おれ自身が。


『俺たちの間に言葉はいらない。俺は、お前に尽くすだけだ。』


そう思っていた。

そう在りたいと、願っていた事だった………



「おれは上手くなりたいわけでもなく、強くなりたいわけでもなく

良いタイムを出したいわけでもなく

ただ、おれを必要としてくれる人と出会いたいんだ」


おれはただ、おれを必要としてくれる人と出会いたかった。

けれど、ゲームの中でそんなものを望むのが、そもそも間違いだったのだ。

みんなここに、ゲームをやりに来ているのだ。このゲームで楽しみたくて来ているのだ。

だから、そうではない自分が、他のひとと心を通わせようとしても、そもそも何もかもが最初から食い違っているのだ。


―ネットゲームは、、、人と心を通わせることを主目的とする場所ではないのだ。


だからおれは、望んではいけない。

誰かに願ってはいけない。特別な人を、作ってはならない。

作ったら、こうなるから。


忘れようとしていた。

何故こうなったのか、何故、逃げてきたのか…


………繰り返してはならないのだ。



Rの愛剣であったブラオレットゼロのウェポンホログラムと、Rから譲ってもらったマグカップ♂と、パートナーコンソールを、自分の布団の側に置き。

おれは一人きり、サポパに寄り添い、話しかけていた。

以前置いていたウェルカムボードの様に。

自分の気持ちを、弔うために。

おれは勝手に、サポパを愛でるようなロールプレイをしながら失望していればいいのだ。

そうすれば、誰にも迷惑を掛けることはないし、寂しくない。

思い出だけは、裏切らない。

だから、ずっとこうしてようと思った。


Google+に、HPを作った。

かつておれのルームが担っていた役割を、かわりに果たさせるために。

―このHPは、最初は墓場のようなものだった。

想いを書き置き、当時のSSをupしては、その時の想いを弔っていた。


…自分は、自分で救うしかないのだ。

おれはきっと、どんなおれの感情も、すきなのだろう。

絶望に浸るのも悪くはないと、思っていた。




* 以下は没文、というか、下の文章書いてたのに存在を忘れて上の文章を書いてしまっていたのだった。どんだけ。



自分が、他人の感情を食い物にして生きる、ネットゲームに巣食う妖怪のようなモノだ、という事に気付いたのは、大分後になってからだった。


「おれは上手くなりたいわけでもなく、強くなりたいわけでもなく

良いタイムを出したいわけでもなく

ただ、おれを必要としてくれる人と出会いたいんだ」


おれはただ、おれを必要としてくれる人と出会いたかった。

おれの腕も、装備も、ただ、そのひとの役に立つために。

側に居られるように。自分の力でそのひとを、まもれるように。



―ゲームのかみさま。

おれのたったひとつのねがいをかなえてください

メセタもPSもタイムもおれにはなんのかちもないのです



PSO2へは、逃げてきただけ。

ゲームがやりたくてここに来た訳ではない。

チャレ(PSO チャレンジモード)のように夢中で楽しく出来るものは、チャレしかない。当たり前のことだ。

PSO2が、面白いか面白くないか、バランスとれているかとれていないかなんて、おれにとっては、間接的には関わってくることかもしれないが、直接的にはどうでもいいことだ。興味がない。


ゲームとしての興味が持てない故に、おれにはPSO2の中に、自分の居る理由が必要だった。

このゲームをプレイする、理由が。


だからおれは、おれを必要としてくれる人を求めた。

求めてしまっていた。

それがおかしいことに、気付かないふりをしていた。


一通り、悲しみと寂しさを味わい尽くし、ふと我に返る。


みんなここに、ゲームをやりに来ているのだ。このゲームで楽しみたくて来ているのだ。

だから、そうではない自分が、他のひとと心を通わせようとしても、そもそも何もかもが食い違っているのだ。


諦めろ、光導。お前の願いは、滅茶苦茶だ。

もう世代も世界も違うのだ。


・・・そして、ネットゲームは、人と心を通わせることを主目的とする場所ではないのだ。