左のステップ
Suite KooDoo
#11 〔左のステップ/1〕
2013年4月10日
レベルキャップ開放(lv60)
『少しの間ですがお世話になりますー よろしくお願いします・・!』
「初めまして。よろしく。少しの間でもたのしくやりましょう」
チームのとある古株の知り合いが、何時の間にかチームを抜けてふらふらしていたので、それならと、うちのチームに誘ったらしい。
大体、チムメン繋がりで入団した人とは、そのチムメンと仲良くない限りは、あまり関わりを持つことがないことが多い。
おれはその古株とはあまり潜ってなかったから、この人ともあまり関わらないだろう
そう、思っていた…のだが。
これが、Lとの初会話だった。
それから何日か経って。
3人でダーカー緊急に行こうとしていたブロックでLと会った。
その時ソロだったLと、一緒に緊急に行くことになった。
とある古株のフレンドだから、そういうスタンスの人だろうと思っていたのだけれど、全然違った。
アサバス込み3段でひょいひょい走るLを見て、すごいなと思った。
「アサバスステップ速いですね。今度よければ走破も色々教えて下さい」と言うと、意外にもいつもソロでしかやってないから、教えたり出来ないとの返事。
はぐれランカーなのかな、と、思った。
* これから2年位後にキャラの通常速度がアップするまでは、ステップやロビーアクションキャンセルやPA(PPを消費する武器固有アクション)を駆使して通常移動速度を上げて移動するのがTAプレイの基本であった。要するに歩くのが遅いから技で移動してた。
武器替えステップはステップ中に武器を別の打撃武器に切り替え、ステップ終了時に小ジャンプをしてまたステップする。
それからほどなくして、一緒に走破を通してみた。
ステップで先行してクラスタで敵を綺麗に殲滅していくLのプレイに、おれや周りはびっくりしていた。
けれど、スムーズに終わったそれらを誰よりも喜んでいたのは、意外にもLだった。各面の敵や仕掛けを、あれこれ考えている人としたのは、初めてだったらしい。
どうやら本当に、ほぼソロでしかやった事がなかったらしい。
前のチームでは、チームでPT組んで何かするということが無かった上、募集TAは怖くてしたことがないそうだ。
ステップもソロTAも、動画等を参考にしつつ、一人で練習したとか。
おれにステップ教えて、と言うと、その日のうちに、特訓が始まっていた。
雑談を交えつつ、二人でひたすら、リリーパTAの長い通路を走っていた。
おれは武器替え3連を、その横でLはロビアク4連を練習していた。
『こっち最初入ったとき、こどさん怖かったんやで・・』
「なんで・・・」
『なんかこう・・プロがいる・・ みたいな。こどさんだけは絶対危ない人や・・!って思ってたw
それなのに知り合い以外で真っ先に仲良くなったのこどさんってゆー^q^』
プロなのはどっちだよ…と思ったのは言うまでもない。
当時はまだおれはパッド使っていたから、小指でテンキーを押す武器替えステップはかなり大変だったし、なかなか出来なかった。
折角教えて貰ったのに、不出来で申し訳ないなあと、思った。
Lは何時の間にか、おれの側に居るようになってた。
おれ、L、R(居る時)、Bさんで、一緒にアドやTAをしてた。
この頃が一番、固定面子でやっていたような気がする。
短い期間だったけれど、楽しく、幸せだった。
毎日、その時間が終わるのが怖かった。
#12 〔左のステップ/2〕
Lは、元チムメンに説得されるような形で、一旦元のチームに戻ったけれど、すぐに10某に帰ってきた。
帰ってきてからは毎日のように側に居てくれた。
2013年4月24日 突破演習:龍祭壇 追加
レベルがカンストしたRは、ソロTA祭壇に篭り始めた。
おれは、LとBさんと数人のフレで、アドをやる毎日だった。
Rが居ないのは寂しかったけれど、Lが側に居てくれるのは、嬉しかった。
…その頃のおれのルームは、墓場のようなものだった。
Rへの想いを書き置いたウェルカムマットで、行き場の無い自分の気持ちを弔っていた。
ウェルカムマットは触れるたびに想いを発言し、おれはそれに応えて独り言を呟いていた。
…故に、部屋には常に鍵を掛けていた。…のだが。
Lは何故かその、鍵が掛かったおれの部屋に入りたがった。
仕方無く、毎回ウェルカムマットを片付けてから、入れていた。
そのうちLは、ログオフせずに、おれの部屋で寝るようになっていた。
仕方無く、鍵を外し、フレンド限定で入れるようにした。
おれの寝室は、Lの部屋となった。
自分が必要とされているのを感じた。嬉しかった。
「おれを必要としてくれる人と、出会いたい。」
それは、この世界の―PSO2の―おれの本望だったから。
嬉しかった。本当に、嬉しかった。
…けれど。
側に居るほどに、そのプレイを肌で感じるほどに。おれは、Lの側に居てはいけない、と心から思った。
Lのプレイは美しくて正確だった。そして、誰よりも熱心だった。
対しておれは、ガチからもTAの世界からも、足を洗った人間だった。
Lの側に居続けたいなら、おれもガチでやらなければ、足を引っ張るだけになってしまう。
けれど、そう決心できるほど、今のおれは上手くもなければ、やる気もなかった。
…だからおれは、Lの側には居られないと思った。
おれの部屋で無邪気に寝ているL
おれは、彼女に近づくことができなかった。
(寝付くまでは部屋の外で。寝てからそっと、ここまでは近づいてはいた)
大事だからこそ、これ以上触れてはならない、と思った。
おれは対面の部屋に布団を敷き、そこで寝ることにした。
#13 〔左のステップ/3〕
2013年5月下旬
レベルがカンストし、アドで貯まったメセタで装備を整えたLは、Rと同じくソロTA祭壇をやり始めた。
元々ずっとソロでTAやっていたのもあり、すぐに、Rを上回るタイムを出していた。
ソロ祭壇について話している二人は、とても楽しそうだった。
おれは嬉しくて、ちょっと寂しくて。
誘われたものの、やっぱり、おれはどうしてもソロTAに興味が持てなかった。
二人が片方ずつ、TA祭壇やっていくのを見せ合うときは、おれも参加したりもした。
二人のプレイを横で見ているのは嬉しかったし、大変参考になった。
けれどおれは、実際にそれをやろうとはしなかった。
『TAをもっと頑張ってみたい』
Lの言葉の端々から、そんな望みが発せられることが多くなっていた。
ある日、二人で部屋に居たときにインタラプトランキング(インラン)のナベリウスⅡがアナウンスされた。
突然Lはおれに、インランやろうと言い出した。
* 当時は予告無しで1時間以内で走破のタイムを集計し出すインタラプトランキングというものがあった。これPSO1チャレであったら絶対楽しかっただろうなぁw
おれとL、その時inしていたRと、おれのフレ(珍しく10某ではない人)の4人で、タイムを出すことになった。
全員、インラン初参戦である。
結果は、突発的だったにもかかわらず、2位PT(5~8位)。
入賞でき、初めてメダルを貰うことができた。
Lは本当に嬉しそうで、それを手伝えたおれはすごく嬉しかった。
と同時におれは、自分の下手さを痛感した。二度とTAインランをしてはならないと思った。
Lはだんだんと、チームから距離を置くようになっていった。
10某のチームチャットは楽しかったけれど、真剣にゲームをやる人間にとっては、迷惑な存在であることを、おれはよくわかっていた。
シンボルアート(SA)を連打したり(当時のチームSAは、発信者をBLしない限りは、防ぎようがなかった)、おれ含む一部の人間が卑猥な話ばかりしていたから。
(SA連打については、見かける度に「防げない事実」を説明して自重をお願いしていたものの、おれが出るまで、止むことはなかった。)
(卑猥な話は…自重してたのだけど、乗せられるとついやっちゃう…ゴメンナサイ…┌(┌;^o^)┐)
おれがLに出来ることは、Lと同じスタンスを持つ人達の元に、Lを向わせること
そのぐらいしかできない。わかってた。
そして、その当てもあった。
かつて、ふらりと10某を訪れ、そして去っていったTAランカーのひと
おれらがナベⅡインランで2位入賞したときに、圧倒的な差で1位だったひと
まだフレンドで居てもらってるから、そのひとにおれがLを紹介すれば、きっと良くしてくれるに違いない
ランカーのひとならば、Lの腕にすぐ気付いてくれるに違いない
わかっている。わかっていた。
終わりの足音がする。側に置いちゃいけないのはわかってたからな。
・・・束の間、幸せだったなあ。
自分で幕引きをせねばならないのが、面倒というか、かなしいというか。
(2013年5月31日)
本当に、わかっていたのに。おれは、動けなかった。
2013年6月中旬 某日
Lが、『(おれが連絡をとろうとしていたランカーのひと)が、アークスカードに
TA一緒にやる人募集って書いてあったから、グッジョブで希望を出した』と言った。
ついに、その時が来た、と思った。
不要だろうし不躾かもしれないと思いつつも、その人にメールを送った。
(Lが)gjしたとの話を、本人から聞きました。
(Lは)うちのチームに入るまで、ソロでTAしてたそうです。
一緒にしばらく色々と遊んできましたが、
やる気もスキルもかなりある人間だと俺は思います。
是非、仲良くしてやってくださいm(_ _)m
前後挨拶等除けば、この様な感じのメールを、送った。
数日後、マイルームにて、無事連絡とれて、無事にTAしたという話を聞いて、安心した。
その場でおれは、10某から抜けることを勧めた。
Lは勧めに従って、その場でリダにメールを出し、10某を抜けた。
Lが居なくなった部屋。久しぶりに寝室に入った。
・・・
ウェルカムマットに、そっと、そう、書き置いた。
そして思った。
「さあ、今度こそ、自分の番だ。」
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