Ein Hander

GC公式鯖でのアのHUctは、いつもの(よく画像が出ていた)黒い鉄の他にも2人居たのだけれど

…今はもう居ないそのHUctは、水色の鉄であった。

もう居ないから、名前も書かない。


アはその鉄では全てのギルカを拒否設定し、他の人に自分を検索できないようにして、自分とわかられないようにしながらチャレをしていた。

…あたしの中でその鉄は、彼の閉じた心の象徴であった。


2005年12月下旬


些細なすれ違いが起こった。それ自体は本当に些細なことなのだけれど。

けれど、そういう時に話している途中でチャレに行かれたことで、あたしは本当に腹を立ててしまった。

すれ違いなんていくらでもあるのだから、それ自体は気にならない。

けれど、覚悟を決めた人間にそういう態度をとられたことが、あたしにとって何より辛いことで。


「責めるために言っているんじゃないから。

 どうにかしてほしいだけ。

 今と未来を。」


悲観に暮れるあたしを、彼が呼んだ。


『誰もいなくなった。

 もし来れるなら、おいで

 仮想空間だけども、会って話そう』


気分が真っ黒だったので、服を真っ黒に着替えていった。

チャレロビのそばのブロック、あたしの好きな青いロビーで

水色の鉄が、黒いあたしを待っていた。

あたしはとても悲しくて、その悲しみを伝えようと、一生懸命話していた。

彼にとって痛いことも沢山言ったと思う。

けれど彼はじっと、あたしの言葉を聞いてくれた。


『お前に会ってからの自分を維持しつつ

 お前が好いてくれた時点での自分を取り戻す

 時間、かかったな・・・

 チャレも、付き合いも

 どっちもうまくいかない今は本当にいやだ

 どっちに関しても

 手を抜きすぎてるんだろう

 本気を見せないことには

 いつか、どちらも成り立たなくなる』


沈黙を挟みながら、彼は

その水色の鉄を消すことを、あたしに告げた…。


2日後。朝方。

ちょっとチャレの進行を手伝って欲しいと言われ、GCの電源を入れた。

以前から水色の鉄を消してFOnmを作りたいと言っていたから

FOnmを進めるのだろうと思いつつ、ログインした。

しばらくして現れたHUctを見て、あたしは驚いた。


Ein Hander


アインハンダー……!

PSOBB、チャレンジタイムトライアル第5位。共に毎日げんかいをした時の、彼のHUctの名前。

そのHUctの記憶は、長い間あたしの中で封印されていた。

護られたことに感謝はしているけれど、護られざるをえなかった自分の弱さを思い出したくなかったから。

それまではほとんど付き合いの無い人だったのに、気がつくと、あたしの中で彼はとても側に居たんだ。

”このひとは、あたしの味方だ”

心がそう言っていた。このひとは、信じられると。


…それは、半年近く前の想い。とても昔に思えた。


まさかGCでアインを作るとは思ってなくて、その理由もまた、彼のインフォボードを見るまではわからなかった。

インフォボードを見て照れるあたし。


『クレオよりも健太よりも、こいつが一番

 ねすこを護りたいと願っていた』


想いの篭ったそのHUctをわざわざGCで新しく作ったことに

彼の覚悟を感じ取って、あたしは涙がでるほど感動した。


『ねすこ

 前を向いて進むよ。お前の為に』


あたしも、あたしもね!

*この記事の日付を設定しようとして…現在もアインの誕生日ちゃんと覚えてましたw
覚えてるもんですね…