Stick Around

2005年11月下旬

アに気持ちを伝えて、やっと悶々とした自分から解放されて、清々しい気持ちで一緒にチャレをした…はずだったのだけれど。

…あれれ?

とんでもなく空回りしている自分に気がついて、焦った。


全然彼の動きが把握できてない。足を引っ張ってばかり。

あれれれ、そんなに今まで一緒してなかったんだったっけか…

いつも一緒に居た気がするのだけれど、気のせい?

あたしはそんなに、彼を見ていなかったのか?


チャレの中のアは、どの職業もなんでもそつなくこなせるひとで。でも、だからこそ、強烈な印象や個性がなかったのかもしれない。

けれど側に居たいのだから、このままではまずい。できるだけ一緒にチャレをして、どうにかしないと。

でも、仕事で忙しいことがわかっていたから、それを必要以上に気にしてしまっている自分が居た。

チャレをしようとしても時間がなかなか合わず、色んな事を話したいのに、なにも話せず

話せても、話題の流れるままに他愛の無い話ばかりになってしまったり…。


気持ちが通じて嬉しかった、はずだ。いや実際嬉しい。

でも毎日、切ない。


アもまた、チャレンジもそれ以外のこともやりにくそうにしていた。

病気明け&こういう風に精神的な環境が変わってしまったことが影響しているように、あたしには思えた。

そしてあたしはそのことをとても申し訳なく思っていた。

あたしが気持ちを伝えなかったら、こういうふうに調子悪くしていなかったかもしれない…。そうとしか思えなかった。

そしてそのことが更に気を使ってしまう結果になって


”…嫌われたくない。近づきたい。怖いよ。”


でもどうすればいいかわからなくて

側に居たいのに、居ちゃいけない気がして、自分の気持ちを否定して、側を離れたり。

そういったことが続いて、どんどん心がしょんぼりしていっていた。


”迷惑になるから。執着しちゃいけない。 ”


好きだった人に否定された経験からかもしれないけれど、あたしの中に常に在ること。

必要以上のシミュレーション。否定的な予測。

どうにかしたいけれど、彼がどう思っているのかもわからなくて。

好きよ、と、ことあるごとにそれとなく伝えても

ありがとう、とは言ってくれるものの、それ以上の反応が無くて。切なかった。


チャレも合わない。気持ちも…合わない。


そんなある日。

あたしは、アと彼の相棒の(青い鉄のひと)と3人で居たのだけれど

なかなか3人で部屋を作っても人が来ないし、ネタやったりというのも動きにくそうだったし

あたしは丁度その時来た誘いのメールに乗って、ふたりの元を離れたんだ。

本当は側に居たかったのだけれど、きっとふたりはふたりのほうが、他の部屋にも入れるだろうし、いいんじゃないかと、そう思えて。

ふたりにとってあたしは邪魔なのではないかと…そう思えて。

でも切なかった。


次の日。


「なんかずっと話したかったり側にいたかったりしても

 意識とは逆のことをしてしまう。

 怖がりなんだろうな

 どうすれば一番適当なのか、よい距離感なのか

 そゆことばかりに目がいって、自分の意思をないがしろにする。」


あたしは、ぽつりとそう発言したのだけれど、彼からなにか返事を聞くことはなかった。

ほどなくして面子が揃って、塔のげんかいが始まった。


無事に塔が13切りした直後、何故か今度は宇宙をすることになって。

これまた全然やったことないのに、他の3人はエキスパ。

思いっきりへこんでしまった。


「ひとりぼっちにされた気分だ。どうすればいいんだろうね?

 必要とされたいと願うことが、いけないことなのかもしれないね

 それはやる気のもとになるものではあるのだけれど  なにも言ってくれないし、

 このままついていっていいのか、不安になったりする。

 なんていうか…出来るならば居場所が欲しいよ。

 こころのなかの、ほんの片隅でいいから。」

あたしは気がつくとそれまでの切なさを吐き出していた。


アは、脳が働かないと言いつつも、こう応えてくれた。


『ごめんなねすこ

 微妙に頼りない奴ですが、それでもよければいつでも隣においで。

 うちのことを気遣っていろいろ動くのはかまわんけども

 こっちも同じように気遣ってどうにかしようと

 動いてはいることも少なからず。

 頼りないかもだけど、隣でまごまごしてたらどうにかするから

 めんどっちいことは考えるな。余計なお世話だ。

 ウチも優柔不断だから信用ないかもだけども、ネス子のことは好きだよ。

 居ていいから居るなら居るでシャキっとなさい。

 自信ないからあっちうろうろとかするのはもうよしなさいや

 自分で席を捕る、という気構えがなさすぎ』


「ないね…。なんかふらふらしたら

 なんかふらふらしたところになんか席があるから座る」


『そんなときウチの隣にだれかきたってウチは断らないからね。

 去るものを追わないものが、引き止める姿をどうとらえるか

 おまかせしまs』


側に居てもいいんだね、あたしは。

ちゃんと好かれているかもわからなくなっていた自分が少し恥ずかしくなった。

この日からやっと何故か気が楽になっていった気がするよ。

そしてそれと共に、チャレの息も少しずつだけれど合っていったんだ。 


―♪Stick Around (Megu with Scotty D. / Beatmania IIDX 8th style)