pandora(3~4)

Suite KooDoo
#21〔pandora /3〕


2013年11月27日 SH走破実装

相変わらず、緊急以外でやれることといったら走破ぐらいしかなかった。

走破にも難易度スーパーハード(SH)が来て、レアドロ期待しつつ経験値も貰いながら、走破出来る様になった。

また、SH拉致はVHとは全く違うマップで難易度が高かった。

リスキルメインで速度重視のVHよりも狩りながらやれる上、拉致のドロップも期待できるようになったから、これならPと出来る、とおれは考えた。


誘いつつ、色々話を聞いてみた。

PはSH走破が実装されてからは、毎日ソロで走破をしているらしい。

今まで頑なに皆との走破をやらなかったのは、複数人で走破したことがないから、とのことだった。

それならば教えればいい、と、おれは思った。


『リリーパのギミックってPTどうしてんだろう』

「1エリは、2こめのドームあるじゃん あっこから3人上に先行してる 下に行った一人が左下のシャッターに触れたら、上のルートが解除される」

『とりあえずピクミンしときゃいい気がした やっておぼえよ…』


けれど。

やりつつひとしきり説明した後で、おれはふと立ち止まる。

今おれがしている事は、最善だろうか?

おれにとっては最善かもしれないが、Pにとってはどうだろう…?


ほぼ毎日走破何周もやっているおれ。片や、ほぼ走破やってなかったP。

4人でやっても身内としかしないだろうクエストなのだし、ガチでもないから、タイムは気にしない。

それなのにおれが一方的に、一般的なやり方を教えることが、本当に最善なのだろうか?

そもそも、おれがPと一緒にプレイしたいだけなのである。

だから、Pのやりやすいように、おれはしたい。


結局、PTでのやり方はあまり教えず、皆で一箇所に固まっているときには全撃破で、何人かでルート分岐しているときには各自の判断で倒す。

Pとの走破では、そんな感じでやることにした。

後に、ハンスの70匹討伐オーダーを洞窟・浮遊以外クリアする、全撃破系レギュレーションは、このような経緯で生まれた。


おれ、P、Dさん、姉様、ソラ、もじゃ。

ベリーハード4面スーパーハード1面で走破する事が一般的な主流となっても、おれらはひたすらにスーパーハード5面での走破をやり続けた。


2013年12月18日

「採掘基地防衛戦・襲来」実装

おれとDさんが新しいチームであるゴリ某(初代)に移籍してから2週間半が経過していた。

新しいチームは活気があって居心地が良かったし、上手な人が何人も居て刺激になっていた。


この日初めて、防衛戦がリリースされた。

23時、Pがチーム(10某)のに行かないとのことだったので、うちのチームの防衛に誘った。

来てくれるらしかったので、どさくさに紛れて、チームへも誘ってみた。


「Pさんうちのチームにくるといいのにww」

『移転してもええけどw』

「まじかw」


断られる気がしていたので、意外だった。


『ピクミンですけどよろしゅうお願いシマス』


久しぶりにPの発言をオレンジ色で見ることができた。

チーム(オレンジ色) wis(ピンク色) pt(水色) パブリック(白色)

こうして4ヶ月少々ぶりに、また同じチームになれたのだった。



#22〔pandora /4 最高の景色〕


2013年12月

Pの仕事は、年末年始、大変忙しい。

当時のアークスカードにも『12月~1月はあまり居ません』と書いてあった。

実際、彼女は忙殺されていた。

防衛やDFだけやってすぐログアウトする日が続いていた。

同じチームになれてとても嬉しかったけれど、同じガンナーだったからか、チームの防衛が2部屋の場合は離れ離れになることが度々あって、そういう時は、一日一度もPのインフィやメシアが見られなくて。同じチームに誘ってしまったことを少しだけ後悔したりもした。



おれは、PとのDF腕での光景を、ことあるごとに思い浮かべるようになっていた。


そういえば…昔おれがやっぱりガンナーだった頃。

Rは、おれがDF腕の弱点にチェインをかけてフィニッシュしようとすると、どこに居ても…おれのレーダーではそれは撃てないだろうという位置に居たとしても、綺麗にwbかけてくれたっけ。

感謝を口にすると『いつでも撃ちますよw』って笑ってた。


―R。

大好きだった、おれのwb。


そう。

綺麗な連携はおれの心を奪うのだ。

何故ならそれは、一人では決して見られない景色だから。

その瞬間を感じたくて、おれはゲームの中、人と出会いたがるのだ。

特別な誰かとの、最高の景色を感じるために。



…そうか…



"Krosis."

久しぶりに、孤独死しそうになっていた。

ここ数ヶ月、孤独死という言葉すら忘れていた。

その前はあんなに毎日、孤独死するって言ってたのに。辛かったのに。

"Krosis."

一人きり、おれは、布団の横のサポートパートナーに語りかける。

ずっとずっと殺風景だった、自分の想いの墓場として使っていたおれの部屋。

今では3人のルームメイトが居て、色んなフレンドやチームの人達が遊びに来てくれて。フレンドの皆からプレゼントしてもらった色々なグッズがあって。

チームには活気があり、日々、防衛して。色んな人と一緒に遊べて。充実していた。


それなのに、心はしょんぼりしていた。

その理由は…自分でわかっていた。


…孤独を感じるということは、それは。

特定の誰かでしか埋められない穴を、心に空けてしまったということ。


おれは、その事実に愕然とした。

もう誰にも、自分の想いを押し付けてはならないのに。

PSO2の中、おれの心は、たった一人を選んでしまったのだ。


「おれは上手くなりたいわけでもなく、強くなりたいわけでもなく

良いタイムを出したいわけでもなく

ただ、おれを必要としてくれる人と出会いたいんだ」


おれはただ、自分を必要としてくれる人と出会いたかった。自分でそう思い込んでいた。


でも。

本当のおれの願いは、そうじゃなかった。


寧ろ、逆だった。


おれは、自分を必要としてくれる人ではなく、自分自身にとって必要な人と出会いたかったのだ。

自分の目で見、肌で感じ、共に戦う中で、その人を選びたかったのだ。


「おれの腕も、装備も、ただ、その人の役に立つために。

側に居られるように。自分の力でその人を、まもれるように。」


…いいえ

…本当は


自分が少しでも…自分が選んだそのひとの役に立てるように

……そのひとの側で…そのひとに自分が選ばれるように…


そしてそのひとと、最高の景色を感じるために。



"Wah kos voth wruth ZIND."

観念した。