The Stone-Like

あたしとアは、1~2ヶ月に一度会っていた。大体彼が福岡に会いに来てくれた。

会えない時はチャットしたりSkypeしたり。もちろん日々チャレンジしながら。


時はそこそこ流れ、2006年秋。

出会って、好きになってからもうすぐ一年という頃だったろうか


その頃はまだ、あたしには好きなひとが何人も居た。

ひとを好きになるのは、すばらしいことだし、それを一人に限定する必要は無いと、その頃のあたしは、考えていた。

あたしを大事にしてくれる人みんなのあたしで在りたかったんだ。

実際、可能な限りはそうしていた。


けれども、リアルでのある出来事がきっかけで、それはできないのだと、思い知った。

大事にしたいのならば、自分の決心で、一人を選ぶこと

それしか、みんなを大事にするすべがないのだと、わかってしまった。辛かった。


そして…あたしが選んでしまうのは…

ちゃんとあたしのことを考えてくれているひとではなく、あたしをまさにその時、しょんぼりさせていたひとであった。

…その時もアとケンカして、無視されていた。

どうしてだろうね?どうして、アなんだろう。

ケンカしてもこちらのことを無視するばかりの人を選ぼうとしている自分

絶対幸せにならないなと、苦笑した。


あたしの大事な人達は、あたしが居なくても他の誰かと出会えるだろう。

ずっと側に居たから、わかる。

けれど多分、アはあたしがいなくなったらずっと一人だろう。

人と関わる必要性すら感じられないひとなのだから。

だからこそ、あたしが居なければならないのではないか

こじつけのようだったけれど、なんだかそう思えたんだ。


石のように何を話しても無反応な彼

無視されて放置されて3日ぐらい経った後

ようやく話せるようになった。


「刹樹、あたしね

 とても刹樹が大事なんだなあっておもってた

 こんなになにもできなくなっちゃうんだなあ、と。

 だから、だから、もしかしたら

 刹樹があたしのたったひとりのひとなのかもしれないと思った」


『幸せになれないかもしれませんよ』


「ならないだろうね!でもそれがいいんじゃないのかな

 ずっと考えてた。体が動かないから頭だけ動いてた

 なんで刹樹なんだろう、とね

 人間の部分というか、頭で考えれば、側にいるひとと

 やっていったほうが、どう考えてもベターなんだ。

 なのにそう選択出来ないのは何故なのか、と。」


そうして、アはこう話し始めた。

今もよく思い出す言葉。


『おいらはなんていうかけっこう前から

 神様っていうのかな

 そういうのにお願いしてたかな』


「なんて?」


『怖いものしらずなお願いだなあ』


「なんだろう?」


『この世の中に自分だけを好きになってくれるひとに会いたいなあとか

 きっときっとレアいだろうけど

 会えたらどんなことでも尽くすと

 そう思っていた


 結果的に尽くせてない部分がアリマスガー

 でも、他のだれかに乗り換えるわけにはいかない

 かみさまからのプレゼントだと思ってるから』


……か、神様……!?

一瞬意識が、屋根の上まで飛んだ。


そのような存在を、その時まであたしはあまり認識したことがなかった。

居るとしても、自分の内に居る、程度にしか思っていなかった。

GCのチャレロビで出会ったのも、BBで仲良くなったのも

そしてこういうふうになって、彼を選んでしまうのも、全部全部

神様というやつが、裏で仕組んでいたと……!?

マジかよ…でも、神様、うーん…


頭の中、アの後ろについた神様が、

”コイツには、こんな特殊な女しか駄目だな!”とかいいながら

遠く離れたあたしの頭を狙い撃ちしている光景を、想像した。

ばかみたいだけれど、今までの不思議な出来事が何となく納得できてしまった。

…いや、納得しちゃマズいけど。

でも、目に見えないからといって、全部否定するのもおかしいし。


しかしながらなんというか、尽くそうと思っていたとか

かみさまからのプレゼントと言われている割には、

無視されまくったりとか、結構ぞんざいな扱いを受けているような;;


『思われるってまだまだこわい

 自信のあることならいいんだけど(ちゃれとか

 居るから平気とか、そういう部分で支えになってる自分は

 いったいなんなのだろうと考えると

 とてもおそろしい』


まだ自分自身のこともよくわかっていないア

でも、とてもとても大事なひとなのだと、思った。